ゼロトラストとは
ゼロトラストは「何も信頼せず、常に検証する」という考え方に基づくセキュリティの設計思想です。「社内にいるから安全」という前提を捨て、アクセスのたびに利用者・端末・状況を確認します。クラウドとテレワークが当たり前になった今、標準的な考え方になりつつあります。
ゼロトラストの基本
これまでのセキュリティは、社内ネットワークの「内側」と「外側」を境界で分け、内側は信頼できるものとして守る考え方が中心でした。しかし、クラウドサービスの普及や社外勤務の広がりにより、守るべきデータや利用者が社内ネットワークの外に出るようになり、「社内/社外」という線引きそのものが意味を失いつつあります。
そこで生まれたのが、場所ではなく一つひとつのアクセスを起点に検証するゼロトラストです。ゼロトラストは、おおむね次の原則に沿って設計します。
- ✓すべてのアクセスを検証する。社内・社外にかかわらず、アクセスのたびに正当性を確認する
- ✓最小権限。利用者や端末には、業務に必要な範囲だけを許可する
- ✓常に監視・記録する。誰が何にアクセスしたかを継続的に把握する
- ✓IDと端末を軸に判断する。ネットワークの場所ではなく、利用者と端末の状態で可否を決める
図でイメージする
境界を守る考え方と、すべてを検証するゼロトラストの違いを図で示します。
イラストで理解するゼロトラスト
専門用語が苦手な方向けに、ゼロトラストの「毎回確認・最小権限」の考え方を3つの図で説明します。
たとえ話:社員証があっても部屋ごとに毎回確認
← 横にスクロールできます →「一度入れば中は自由」ではなく、部屋(システム)ごとに毎回、本人と権限を確認します。
ビフォー/アフター:玄関だけか、毎回か
← 横にスクロールできます →従来は玄関(境界)だけ確認すれば中は自由でした。ゼロトラストはアクセスのたびに検証し、必要な範囲だけを最小権限で許可します。
ステップで理解:検証されるアクセスの流れ
← 横にスクロールできます →アクセスのたびに本人・端末・状況を検証し、必要な範囲だけを最小権限で許可。すべてを記録・監視します。
メリット
- ✓一か所を破られても、被害が広がりにくい(アクセスごとに検証するため)
- ✓社内・社外を問わず、場所に依存しない一貫した防御ができる
- ✓クラウドやテレワークが前提の現在の働き方に適合しやすい
- ✓誰が何にアクセスしたかが分かり、可視性が向上する
デメリット・注意点
- !ゼロトラストは考え方であり、特定の製品ではない。複数の仕組みを組み合わせて実現する
- !一度に切り替えるのは難しく、計画と段階的な移行が必要
- !ID基盤の整備が前提になる(利用者・端末を正しく管理できていること)
- !監視やポリシーの見直しなど、運用の負荷が継続的に発生する
主なゼロトラスト関連製品・サービス
ゼロトラストを支える代表的なプラットフォームです。ゼロトラストは単一製品ではなく考え方のため、複数を組み合わせることもあります。既存環境との相性で選ぶことが大切です。
Microsoft(Entra / Zero Trust)
Microsoft 365 / Entra ID を土台にID中心で進められる。既にM365を使う企業に親和性が高い。
公式サイト ↗Zscaler Zero Trust Exchange
SASE/SSE専業大手の基盤。ネットワーク側からゼロトラストを進めたい企業に向く。
公式サイト ↗Palo Alto Networks
ファイアウォール大手のSASE基盤。高度な制御を求める企業や既存Palo Alto環境に向く。
公式サイト ↗Cloudflare Zero Trust
世界規模の高速基盤を活用。比較的シンプルで中小〜中堅でも始めやすい。
公式サイト ↗Cisco
Duo(多要素認証)やUmbrellaなどを軸に構成。Cisco製品との親和性が高い。
公式サイト ↗※ 製品名・URLは2026年時点の一般的な情報です。最新の仕様・料金は各社の公式情報をご確認ください。
導入の流れ(一般的な進め方)
ゼロトラストは一度に完成するものではありません。現状を把握し、土台となるID基盤から段階的に進めるのが現実的です。
ゼロトラストとSASEの関係
ゼロトラストとよく一緒に語られる言葉に「SASE」があります。両者は競合する別物ではなく、役割が異なります。
ゼロトラストは「何も信頼せず、常に検証する」という考え方(設計思想)です。一方で、その考え方をネットワークとセキュリティの仕組みとして実現する手段のひとつが SASE です。つまり、目指す方向性がゼロトラストであり、それを具体的な仕組みに落とし込む選択肢のひとつが SASE という関係になります。
中堅企業での導入イメージ
よくいただくご相談をもとにした想定モデルケースです。実際の進め方や効果は環境により異なります。
従業員 約600名・サービス業
課題:VPNで社内ネットワークに入れば、社内システムやファイルサーバーに広くアクセスできる状態。万一アカウントが乗っ取られると被害が全社に広がりかねない。退職者・異動者のアカウントや権限が適切に止められているか不安がある。
既存環境:VPN前提の社内アクセス。複数拠点・在宅勤務が混在し、利用者管理は部署ごとにばらばら。
- 1Entra ID で利用者IDを一元化し、多要素認証(MFA)を導入
- 2業務端末を管理下に置き、状態を確認できる状態に
- 3「社内に入れば全部見える」状態から、アクセスをアプリ単位に絞り込み
- 4アクセスログを監視し、ポリシーを継続的に見直し
効果:万一アカウントが悪用されても被害範囲が一部に限定され、全社への横展開を防げるように。退職・異動時はIDの無効化で権限を一元的に止められ、本社・拠点・在宅のどこからでも社内・社外を問わず同じ基準で守れるようになった。
※ 上記は想定モデルケースです。実際の構成・効果はお客様の環境により異なります。
よくある質問
- Qゼロトラストとは何ですか?
「何も信頼せず、常に検証する」という考え方に基づくセキュリティの設計思想です。「社内にいるから安全」という前提を捨て、アクセスのたびに利用者・端末・状況を確認します。 - Q従来の境界防御とは何が違うのですか?
従来は社内ネットワークの内側と外側を境界で分け、内側を信頼して守る考え方が中心でした。ゼロトラストは場所ではなく一つひとつのアクセスを起点に検証するため、境界の内側でも安全とは見なしません。 - Qゼロトラストの主な原則は何ですか?
すべてのアクセスを検証すること、業務に必要な範囲だけを許可する最小権限、常に監視・記録すること、ネットワークの場所ではなくIDと端末の状態で可否を判断することです。 - QゼロトラストとSASEはどう関係しますか?
ゼロトラストは「何も信頼せず、常に検証する」という考え方(設計思想)です。SASEは、その考え方をネットワークとセキュリティの仕組みとして実現する手段のひとつにあたります。 - Q中堅企業は何から始めればよいですか?
一度に完成するものではないため、まず現状を把握し、Entra IDなどによるID基盤の整備と多要素認証(MFA)から段階的に進めるのが現実的です。
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